2012年12月30日日曜日

中国の買収額は米国全体のM&Aのわずか1%:中国、M&Aには慎重

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ウォールストリートジャーナル     * 2012年 12月 28日 20:21 JST 
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324484504578207033169060570.html
By DUNCAN MAVIN

中国、米企業のM&Aには依然として慎重  

 中国勢が2012年に実施した米国での買収総額が過去最高に達したことは、米国の保護主義の政治家や規制当局者が新年会のカナッペを喉につまらせる原因としては十分だろう。
 だが実際のところ、中国の米国への買収意欲は依然として驚くほど限られている。

 12年の中国による米企業の買収総額は約105億ドルと、年間ベースでは最も高く、過去4年間の買収総額平均に匹敵する水準となった。
 また、中国が同年中にアジア、アフリカ、中東、中南米で実施した買収案件の総額をも上回った。
 中国の米国債保有残高は10月まで減少し続けたが、これも同国の資金調達方法が中央銀行を通じた米国債の購入ではなく、自国企業による生産的資産の買収にシフトしたことを示している。

 これとは対照的に、
 米国による中国企業の買収総額は約50億ドルと、前年の半分程度、2008年の3分の1以下に落ち込んだ。

 今年は比較的大規模な買収が数件あったため、統計値にはゆがみが生じているものの、いくつかの点は一貫して変わっていない。

 第一に、通常の買収案件の規模は小さい。
 中国が12年に実施した米企業の買収案件は約43件で、1件当たりの平均買収額は2億4500万ドル(約 210億7000万円)だった。
 数件の超大型案件を除くと、買収総額は数十億ドル余りに過ぎず、平均買収額も1億ドルを下回る。
 このことは、小型案件ほど規制当局や政治家の監視の目をすり抜けやすいという見方を裏付けている可能性もある。

 第二に、中国の米国資産への購買意欲は石油やガスだけにとどまらない。
 大手会計事務所デロイト・トウシュ・トーマツが中国に特化したM&A業者を対象に実施した国際調査によると、中国が米企業を買収する主な目的は、技術、ブランド、市場シェアの獲得だった。

 米国資産の獲得を主な理由に挙げた中国企業は全体のわずか6%にとどまったという。
 その好例としては、ここ数週間に中国国有の自動車部品メーカー、万向美国が米電気自動車(EV)用バッテリーメーカーA123システムを2億5660万ドルで落札したことや、米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)(NYSE:AIG)が航空機リース部門インターナショナル・リース・ファイナンス(ILFC)の株式80.1%を現金42 億3000万ドルで中国のコンソーシアムに売却する方針を発表したことなどが挙げられる。
 中国の複合企業、大連万達集団が米映画館運営大手AMCエンターテインメント・ホールディングスを26億ドルで買収したことも特筆に値するだろう。

 また、一部の石油・ガス案件は高額で買収が成立しているものの、過度に高い買収額を提示しない買い手もいる。
 中国のコンソーシアムはAIGから ILFCを買収する予定だが、その金額は他社による直近の航空リース買収額を下回るだけでなく、AIGが3年前にILFC上場に向けて準備した費用よりも少ない。

 とはいえ、
 最も説得力がある統計は、
 中国の買収額は米国全体のM&Aのわずか1%
を占めるに過ぎないということかもしれない。
①.この一因として、対米外国投資委員会(CFIUS)などの規制当局が買収に介入するのではないかという懸念も考えられる。
②.もう1つの要因は、中国国内の方がより多くのリターンを望めることだろう。

 中国経済は足元では減速しているものの、比較的高い成長を維持している。
 デロイトの調査は、2013年の中国による米企業のM&A件数が小幅増加にとどまる可能性を示唆している。
 ただ、大規模な路線変更はないとみられる。
 中国企業は今後も米国に進出するだろうが、それを全速力で進めることはなさそうだ。